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四四十六茶小説



湖に咲く花、それは蒼く儚げに、いつ枯れるとも知らず、されど凛と咲き誇りて


瞬きしたら、私は知らない部屋で横になっていた。



「………」



違う。きっと倒れたんだ。



起きて辺りを見回す。ベッドは2つ。私が寝ていたものと、その少し離れた場所にもう1つ。

部屋はいたって質素で、装飾は必要最低限しかない。
あるといえば、壁にかけられた小さな絵くらいなもの。

「…カシス…?」

その絵に描かれた男性は、鮮やかで凛々しい、長い銀の髪。シンプルな造形の、それゆえ美しい剣を掲げていた。

「…ランバー…ヤード…?それじゃあ、この絵…」



「オレの親父だよ。何年も前に死んじまったけどな」



振り返った先に、いつの間にかいた彼。ほんの一瞬、だが確かに、描かれた男性を見た気がした。






「ったく、驚いたぜ?話してる途中でいきなりぶっ倒れるんだから」
飄々と笑うばかりのカシスに、一見して驚いたような様子はない。
けど私が倒れたときは、彼が言うとおり、さぞ驚いただろう。
「…ごめんなさい。迷惑、かけて」
「いいよ、別に。軽かったし」

「…ぇ?」
「軽かったから運ぶのも楽だったって、そういう話。普通じゃ見られないような表情も拝めたことだし」
「…―ッ!」

「何言い出すのよッ、このバカシス!」
「ははははっ。それだけ元気がありゃ、しばらくは大丈夫だな」
怒鳴っても、少しも動じない。何なのだろう、彼は。

「さて、と。ここからおまえん家まで少し距離があるけど、自分で歩けるか?」
笑っていたと思えば、次には真顔。百面相でもあるまいに、本当に何なのだろう、彼は。
「大丈夫よ。歩ける…っく」
「おっと…?」

立とうとしたけど、足に力が入らない。よろけたところを、カシスに支えられてどうにか立てた。

「何だよ、全然ダメじゃんか。強がりもほどほどにしとけって」
「………」
呆れたように笑う彼を直視できなくて、つい顔を逸らした。
「…しっかし、参ったねコレは。家まで送ってやらなきゃってのに」

「ダメっ!」
「!?」

「やめて…あそこにいくのだけはやめて!」
「やめろ、と言われてもなぁ。おまえの病気は、かかりつけの医師が一番わかってるだろうに」
「イヤなの!お願いだから、あの白い部屋だけはやめてッ!!」

どうしよう、止まらない。言葉が次々と口をついて出てくる。

「怖いの、何もないあの部屋が!」
「…ブルーベリー」
「牢獄なのよ、あそこは!部屋だなんて名ばかりの…」

突然、両肩に置かれた手。それに押さえつけられたかのように、私の声は止まった。

「…落ち着け、ブルーベリー。そこまで言うなら、そっちには行かないから」
「…ホントに?」
「嘘なんて吐くか。『裏』づたいに知り合いがいるから、そっちに行ってみる」

そういって彼は、私に手を差し出してきた。

「…?」
「まだフラついてるだろ。それに、もしはぐれたら何かと面倒だし」
照れくさいのだろう。少しむすっとした表情だった。

「ダメじゃない。そこは余裕ありそうに笑ってなきゃ」
「ん?ナンパな野郎はお断り…じゃなかったか?」
そういう彼を無視して、差し出された手を取る。
「誰がいつ、そんなこと言ったかしら?」

「………」
「………」

その後は、2人して少しだけ笑った。



カシスの言う『医者』は、喫茶店経営の傍らで勉強中の『卵』。私達もよく知ってるヒトだった。
いつもの彼女からは想像もつかないほどに真剣な表情。診察も素早く的確で、結果は『異常なし』。
彼女曰く『こんな病気、寝てればすぐ治るわ』だとか。軽く笑い飛ばしてくれたから、気が楽になった。

…ただ、その後で金髪の子…誰かは特定できなかった…をどつき倒してたのは、明日には忘れておきたい。



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