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四四十六茶小説



ぶらっくじぇみに


「…雨」
「………」
麦藁荘の一室。グレーの帽子を被り、金の髪をカールさせた少女が、窓の外を見て呟いた。
ベッドには、同じグレーだが微妙にデザインが違う帽子の、茶色い癖っ毛の少年。

その瞳は、少年も少女も赤かった。



「あーあ、なんで雨なんて降るのかしら。せっかくの休みなのに、外に出られないじゃない」
表情からすればどうでもよさそうな感じだが、実際のところ、相当に残念なようだ。
「……」
「笑わないでくれる?仕方ないじゃない、こういう性分なんだから」
苦笑を浮かべる少年に、少女はぴしゃりと言い放つ。
「……。…」
「…?ワタシにもわかるように言いなさいよ。アナタと違って、頭がいいわけじゃないんだから」
「…」
「そのままの意味?『空が泣いている』?」
「……」

少女は少年に聞き返す。…少年は、何一つ言葉を発してなどいないというのに。



「…ふぅん。…わたしは雨に神秘性なんて見出したことはなかったわ」
「……」
「…何とでも言ってなさい。どうせワタシには、アナタみたいなセンスはないわよ」
「………」
無関心に見えて実は拗ねてる少女。少年は困ったように笑う。
「…」
「ちゃんと覚えておくわよ。『抽象的な存在も、命があって意思がある』…でしょ?」
「……」
少し呆れ交じりに少女が言うと、少年は満足げに頷いた。
「わかればよろしい、って…。アナタまでマドレーヌみたいなこと言わないでよ、ドルチェ。
…というより、アナタ最近シリアルかブレッドかに似てきてないかしら?」
「…?」
「そうよ。昔…といっても、覚えてる限りでの話だけど…は、そんなファンタスティックというか哲学的なコトは言わなかったわ」
「……」
「…ふざけないで。ワタシは元々こうよ。捻くれてるのだって、余裕があるんじゃない。元々なの」
憮然とした態度で少女が言えば。
「…。……?」
「っ」
少年は悪戯っぽい笑みを浮かべ、自分の右手で少女の左手を掴む。
「あ、アレは…。…そう、アナタがはぐれないようにするためよ。あの時からちょっと頼りなかったし」
「……」
それを聞くと、少年はさらに悪戯っぽく、にやりと笑った。振り払おうとする少女の手を、少年はしかし離さない。
「―ッ、ばか!今更そんなコトいうのは反則よッ。…恥ずかしいじゃない」
今までのつっけんどんな態度はどこへやら、かぁっと頬を赤らめ、顔を背けた。
「……」
「…ええそうよ。ワタシは不安なときは何かにすがらずにはいられなくて、独りにされたくない寂しがりやよ。これでいい?」
自棄を起こして、思ってもいないことを早口でまくしたてる。それを聞いて、少年はようやく手を離した。

「……」
「…また『わかればよろしい』?…その言い回し、つくづくマドレーヌとブレッドにそっくりね」
「…」
「…まあ、ね。ワタシ達のまわりには印象の強いのがたくさんいることだし、影響されてもおかしくないわね」

「わかってりゃそれでいい」
そんな声が、扉の内側から聞こえた。



「あら、人の部屋にノックもなしに入ってくるなんて」
「なぁに言ってんだよ。何だかんだ、もう3年越しの付き合いだろ?」
「…それもそうね」
「………」
その声の主は、黒い鉢巻の少年。彼と少女のやり取りを聞き、帽子の少年は穏やかに笑う。

「朝飯ができたぜ。さっさと降りてこいよ?」
「わかってるわ。そろそろそんな時間だと思ったもの」
「…わかってりゃそれでいいさ」
意味深な微笑みを残し、黒鉢巻の少年は部屋を出て行った。



「…行こ、ロゼ」
不意に発された少年の声はカタコトで、声量は小さく発音も少し変だった。

「…相変わらず、自分の口で喋るのはソレなのね。…マトモに喋れるのは、いつの話かしらね」
「……」
「…確かにその通りね。変われれば変わるし、逆なら変わりようもない。なるようにしかならないコトは、気にするだけ野暮だわ」

そこで会話は終わった。2人は立ち上がり、扉を開け、階段を下りていった。






空はいつの間にか、泣き止んでいた。

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