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四四十六茶小説



闇黒の狂姫















「くくっ…ヒネりツブしてやる。クルしむもそうでないも、キサマらシダイだぞ?」









『闇』が全てを塗りつぶす。『黒』が何もかも奪い去る。
『狂』ったように叩きつけられる力。そこに立つ彼女は、どこかの『姫』のように凛と。



「…はっ、彼我の力量差も理解できないバカどもが」
一瞬で物言わぬオブジェと化したソレに、嘲笑をひとつ投げ落とす。
そして目障りだとでも言わんばかり、つま先で無造作に蹴ってどかした。









「…どうした?不思議なものでも見るような目で」
「いや、なんでもないよ」
振り向いた彼女に返事を返したのはポモドーロだった。
「さっさとするんだな。急いでるんだろう?」
腕を組み、無表情に視線を注ぐ。彼が歩き出すと、彼女もまた並んで歩き出した。
「わかってる。…でも、他人事みたいな物言いだな?」

「…他人事、だ?」
そう聞いた途端、彼女はくつくつと笑い出した。
「ぁー?何がおかしいってのよ、リーベ?」
「そうなノ。リーベ…あれから何かヘンなノ!」
後ろから言い募るジャスミンとチャイ。だがそれも、彼女に届いてはいない。
「はははは…ッ!私には、もうあの女のことなんかどうだっていいのさ」
「な…ッ!?」
それどころか、どうでもいいとまでリーベは言い切るのだ。



「すべてはな、目に物見せてやるためだよ。私達がこんなところを旅するきっかけを作った奴等へのな」
「…それ、本気で言ってるの?」
「ああ本気さ。海賊も警察も、あの女だって、その対象に入っているぞ?」
「リーベ!」

「考えてもみろ?もともと私達が学校を飛び出したのも、あの女が帰ってこなかったからだ。
…あの女が帰ってこなかったから私達がここに来て、来てみれば海賊から妨害を受け、挙句警察は役立たず。
その上、海賊と警察は手を組んでいた?結構な話じゃないか。それだけならそれだけで済んだんだ」

歩いていた足を止め、振り向かないまま喋り続ける。

「だがしかし…だ。奴等は、何をした?大切な…兄とも呼べる、大切だった『彼』に何をした?」









『さあ、覚悟したまえよ諸君!痛い目にあわせてから逮捕してやるからな!』
『チャイを、返せ!!』
『っ!シュイ!?』
『…スペース、ライ―』
『オゼイユファング!』
『っぐ!?』



『うわあああああッ…!』
オウ・キュウリの魔法のツタに吹き飛ばされたシュイ。

『…シュイ…?』
だが、何ということだったろうか。

『シュイ…!?』
彼の体が落ちる先は、中空だった。



『シュイーーーーーッ!!!』



『…く、くそっ!殺す気はなかったんだ、これは過失だ!抵抗するおまえ達が悪いんだぞ!』
アレがそんな事を言ったとき。



『…。貴様…?』
その時からだ。リーベが、まるで別人のように変わっていったのは。









「そうだ、突き落としたんだぞ?あの下に、助からないような高さから…!」
今にも叫びだしそうな口調で、リーベは激するように言葉を吐き出す。
「そのうえ『過失だった』と、それだけで片付けた。助けにも行かない。許せるとでも思うか」
「ソレはわかってる。わかってるけど…!」
「わかったから何だという?」
何か言いかけたジャスミンを制するように、リーベは彼女を遮った。

「だから私は潰すのさ。海賊も警察も、何もかもな」



「…なあ。リーベは本当にソレでいいのか?」
「さあな。後になってみれば、あるいは悔やむことだってあるだろうよ。
だがそれも、終わった後の話だ。今は復讐と八つ当たりが私の全てなんだよ、ポモドーロ」
「……。変わっちまったな」
「フ…、変わりもするさ。片割れを、目の前であんな理不尽に殺されれば…嫌でも変わりたくなる」
リーベはかすかに、自嘲らしき薄笑いを浮かべる。



「さあ、くだらない話はここまでだ。さっさと行かないと、手遅れになるぞ?」
「マッテ。イキサキハワカッテルンデスカ?」
「わからなければ急ぎはしないさ」
毛先がくるくるの長い髪を、リーベは掻き揚げる。

「私達の船では火の星へはたどり着けないとか、木の星で会った海賊は言っていた。
ならば、水の星のドワーフをあたるしか打つ手は無いだろう?」

「ナルホド。サスガハリーベサン、リチテキナノハアイカワラズデスナ」
カフェラテ、ここぞとばかりリーベをヨイショ。
「そうか?今までは勘に頼ってばかりだっただろう?」
「イエイエ。リーベサンノハンダンリョクハ、モトモトアッタモノデスヨ」
「…そう思いたければ、そういうことにしておくといい」
やれやれと薄く笑うリーベ。…ただ、その笑みは呆れだけからくるものではない。

「…判断力もそうだけど、素直じゃないのも相変わらずなノ」
「まったく同感。あれがツンデレってもんなのか?」
「ツンデレかどうかはともかく、もしリーベに好きな人ができたら、きっと一途だよー?」



「なーにを言ってるんだ、貴様らー?」
「うわ、聞かれてる!?」
「さっきから聞いていればツンデレだのどうだの…人様を勝手にそんな風に呼ぶんじゃない」

ぬーっとポモドーロの後ろから顔を出すリーベ。心なし、むくれている。…が。

「ほらー、照れてる照れてるー」
指さし笑うはジャスミンさん。
「なっ…!まだ言うか、貴様はー!」
今度は誰の目にも明らかに、顔を赤らめて怒る。
「わっはっはー、ツンデレツンデレー!」
「ジャぁスミぃぃぃン!!」



「「「………」」」
追いかけっこを始めた2人を見て、疲れたような呆れたようなため息を1つ。
「…追いかけなくていいノ?」
「ナントイイマスカ…。ナンダカンダイッテ、コンテイハカワッテナインダナ、リーベノヤツ」
「ま、良くも悪くも、それがリーベの本質ってやつだろ。…だいぶ歪んじまったけどな、性格」

「「………」」
「…ん?どうしたんだよ2人とも」

「…ポモドーロが知的なこと言ってるノ」
「ジツハ、ユガンデルノハポモドーロダッタリシテ」
「なんだとぅー!?俺がそんなこと言っちゃ悪いかー!?」
「…やっぱり単細胞なノ」
「タンジュンデスナ」
「チャぁぁぁイ!!」

「ひゃー!?なんでボクだけ追いかけられるノー!?」



「………」
1人、ぽつりなカフェラテ。
「…ヤレヤレダゼ、ブラザー」
そんな事を呟いた。
「…ダレダッケナ?センセイノナカニ、ソンナコトヲイッタヒトガイマシタッケ」
そのまましばらく思い出に耽るカフェラテ。



―カフェラテ、カフェラテ。置いていかれてるぞ?
「…!?」
不意に聞こえた声に驚き、辺りを見回すも、誰もいない。
代わりに、土煙がふたつ町の方へ走っていくのを見た。
「…ソラミミ?ロボットノオレガ?」
―………。
もう一度耳(?)を澄ますが、何も聞こえない。

「…ット!コウシチャイラレナイ。オイテカレチマウ」
マッテクダサイヨー。がしゃんがしゃんと、カフェラテはそそくさとその場を後にした。



―…妹を、頼むぞ?



その夜、流れ星がひとつ、強く輝きながら落ちていったという。



...fin

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