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四四十六茶小説



湖に咲く花、それは蒼く儚げに



―また、今日も軽い発作が起きた。

臨海学校から帰ってきて、ちょっとずつ良くなっているとお医者様は言っている。
けどそれも本当にゆっくりで、当分は今まで通り、命に関わる発作もありえるらしい。

こういう時、私は誰もいない清潔な部屋ですごす。体調が安定するまで。
お医者様と、清潔な白い服を着たヒトが、日に数回診察に来たり、食事を持ってくる。

家の中の他の部屋とは、到底似つかない、真っ白な部屋。
窓は開かない。扉もこちらからは開けられない。
話し相手はいない。気を紛らわせるようなものも、そこにはない。
親友のレモンもいない。精霊も入ってこれない。

誰もいない。何もかもない。

ここにいる間、私は独りだ。

独りは怖い。特に、室内…それも狭い部屋で独りきりなのがもっと怖い。
レーミッツ宮殿。体調を崩した私はホールに隠れて、ペシュとレモンが事態の打開の為に外に出ていた。

いつあのエニグマが現れるか、考えるたびに怯えて。
発作がだんだん酷くなるのを、感じるたびに苦しくて。

独り…たった独り取り残される恐怖に、どれだけ私は震えただろう。



何が書きたいか、わからなくなった。筆が進まない。
幸い、あの部屋からは何時間かで出られたということを、記して終わろう。









「おはよ、ブルーベリー」
「おはよう。…毎度のことだけど、元気よね、レモンは」
「へへ。武術は未だに止められてるけど、それでもうちの道場の朝って早いから」
彼女は屈託なく笑う。多分、身長だけじゃなくて、この笑顔のせいで16歳とは見られないのだろう。

「よう、おふたりさん」
「あっ、こら!手ぇ離せ!前見えないって!」

後ろからかけられた声。その声はよく知っていて、振り返る。
そうすると、やっぱりよく知った姿がレモンの目を手で塞いでいる。

「…後でどうなっても知らないわよ」
「まったく。どうしてカシスは、いつもいつも災厄に自分から足を突っ込むんだろ」
いつの間にか、隣にもう1人。
「おはよう、シードル」
「おはよう、ブルーベリー」



しばらくレモンは鬼ごっこするみたいだったから置いてきた。そのうち教室にくるだろう。






「……」
昼休みになって、私は机に隠しておいた日記を読み返していた。

誰にも読まれたくなかったので、余分なノートを使い、勉強用のノートに紛れ込ませ、あえて持ち歩いている。
私のノートは字がびっしりで、自分でもちょっと読みづらいから、普通なら誰も手をつけたりはしないだろう。

…そう、思っていたのだけれど。

「…!」
私は、昨日書いた日記の次のページを開いて、たった1行、急いだような殴り書きを見つけた。



ナカナイデ。 本当の孤独も知らない、まだ淡い花びらに 涙の粒、抱えたまま



「…なに、これ」

驚くと同時に、急に、かぁっと頬に熱がこもる。



―見られた。全部。



さらに、憤り。こんな場所に放っておいた自分が悪いのはわかっているけど、そんなことも関係なく思えてしまう。

「…誰なのよ。私の日記に勝手に何か書いたの」
犯人を見つけたら、ちょっとガミガミしてやろう。



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