1,門
…臨海学校?…ああ、よーく覚えてるよ。
よかったら聞かせてあげるよ。
一番印象に残ってるのはまあ、ケルレンドゥとの戦いなんだけど、
インパクトの強い出来事ってのは他にもあった。
そう…アレは魔バスが動きだした直後のことだ。
「飛ばしていくぜぇい!しっかり掴まってろよ、がきんちょどもー!」
そういって、バルサミコがエンジンをふかす。うるさいって。
「あの校門を抜けたら…いよいよヴァレンシア海岸にいくんだね」
「何いまさらなこと言ってるのよ、キャンディ。もうバスは動いてるわ」
「あ、そっか。私達が入学した時点で、もうヴァレンシア行きは決まってるのよね」
そのやり取りに何処か意味不明なものを感じるよ。おふたりさん。
ピンク帽子と水着もとい、シュガーとキャンディの会話。
「……」
「……」
何か喋ったらどうだい?…あ、根暗と岩だから無理か。
さあ、何はともあれ、もうすぐあの門が開いて、僕達は魔法学校を離れるんだ…
門、閉じたまま。少し近づく。
…もうすぐあの門が開いて…
門、閉じたまま。さらに近づく。
門が開いて…
門、閉じたまま。もう目前。
そして僕らは、門に拒まれ二度と動けぬ身となった…。
おわり
…そんなはずがないじゃないか。ここで死んだら物語成り立たないから。
実際は、見事に門が粉砕されたのさ。減速すらすることなく。
後で降りてバスを見てみたら、車体には傷1つついていなかった。文字通り無傷さ。
我が目を疑ったよ。硬い物同士があのスピードで衝突して、片や粉々、片や無傷。
最近はやりのフェ○ズシ○トってやつかい?どんな事故でも安心だね。
そんなバルサミコご用達の○ェイ○シフ○魔バス、今なら300万ブラーでご奉仕。
ご注文は今すぐ…(音声が途切れました)…までお電話ください。
それでは、テレホンショッピング『コヴォマカ密売交渉』でした。
この放送は、ウィル・オ・ウィスプの提供でお送りしました
この番組はフィクションであり、ゲーム『マジカルバケーション』とは一切関係ありません。
2,臨海学校
やあ、さっきは変な方向に話を持っていってゴメン。
もうあんなふうに脱線したりしないから、許してね。
さあ、次は海岸についてからの話だ。
魔バスがゆっくりと其のスピードを緩める…と思ったら大間違いだ。
スピード狂の彼が、だんだんと減速するのをよしとするとでも?
結果はこうだ。
「ちょ、バルサミコ…っ!?もう停車予定地点ぎりぎり…!!」
知り合いだったのか、先生は運転手を呼び捨てる。
「ぎりぎりまでこのスピード感を味わっていてぇのよ!ちゃんと止まっから安心しな!」
「無理!安心できませんッ!!」
ここまで来るとそれは、頼み込むと言うよりもむしろ悲鳴に近かった。
徐々に近づいてくる…いや、あえて巨大化していくと形容しよう…コテージ。
…我らが愛すべき哀すべき運転手バルサミコ。君はそのフェイズシフト魔バスでコテージをも粉砕する気か…!
実際はそんなことは起こらなかった。さしもの彼もそこまでスピードにこだわるわけではなかった。
だが、思い出してほしい。バルサミコは、先生が僕達乗員の悲鳴を代弁して止まれと懇願したこと。
言い換えれば、それだけのスピードから、大した距離もなく止まったという事実を示す。
短距離で、かつわずか数秒で時速0km。すなわち急停止だ。
そして、僕達の中で小さい&軽かったメンバーが、あわれフロントガラスを突き破り砂浜との熱いキッスを経験することになる。
「ペシュ!!?」
「オリーブ、しっかりしろ!?」
「おいセサミ大丈夫か返事をしろ傷は浅いぞいやたとえ傷が深くても諦めるな気を強く持てきっと助かる俺を信じろむしろ俺が助けてやる(以下略」
「…ピスタチオミサイル(ぼそ」
普通に驚いてその名を叫ぶブルーベリーとガナッシュ、とてつもなく混乱して色々口走るキルシュ。
ちなみに、『ピスタチオミサイル』は、僕が口にした的確な状況表現冗談だ。
まあ上記の4人の叫びが示すとおり、飛んでいったのはペシュ、セサミ、オリーブ、ピスタチオの4人。
オリーブとペシュはその気になれば飛べたんだけど、いかんせん突然で対処する間もなかったんだろうね。
ちなみに、海岸に近い場所に止まったからか、特に軽かったペシュ、ピスタチオは
止まりきらずに転がり続けて、2人で仲良く海にローリングダイブ。いつ思い出しても面白い悲惨だね。
話を戻そうか。
その後は、セサミに引っ張られて洞窟探検。適当にメンバーを集めて、いざ不法侵入。
「ああっ、何かいるぞ!何だあれ!」
「虚空を指差し叫んでも、僕らにとってはとてつもなく奇妙奇天烈な行動にしか見えないから慎んだ方がいいよ」
「何かもじゃもじゃのがいた気がするんだよ」
「確かに何かいたんだー!」って繰り返すセサミの妄言をBGMに、僕達は必死でセサミを先生のとこまで運んだね。
何で必死かって?そりゃあ、クラスメイトがおかしくなったんだもん。早いとこ介錯してあげるのが友情って物さ。
…え?激しく間違ってるって?
…やだなあ、わかっててやったに決まってるじゃないか。
まあ、この後の展開は知っての通りだから割愛するとしよう。それじゃあ、続きはまたいつか。
3,初めての旅
…そこは、さっきまでの惨劇とはかけ離れた世界。
暖かな光が注ぎ、のどかな木々にあふれ、鳥達のさえずりさえも聴こえてくる。
さっきの生き物…エニグマって先生は言った…の気配、かけらも感じない。
ただ、何処までもやさしげな景色が、何処までも広がっていた。
「…みんな、近くにいるとは思うんだけど…」
少し辺りを見回して、皆の代わりにツボを見つけた。…彼(?)に聞いてみよう。
「…ねえ、この辺りで、突然出てきた子供を見なかった?」
「子供ですか?」
「そう、僕と同じくらいの」
ツボはちょっと考え込んでいる。
「…いえ、見ませんでした」
「そう…ありがとう」
何も知らないみたいだ。…仕方ない、先に進んでみよう。
「あ…」
少しいくと、ミサイル…いやいや、違う違う…ピスタチオがうろうろしていた。
「フレーク!」
こっちを見つけたらしい、しっぽを振って駆け寄ってくる。
「やっぱり君もこっちに来てたんだ…」
「フレークがいるなら心強いっぴ。一緒に行…」
…?どうしたんだろ、突然凍り付いて。
…僕を見てそんなリアクションッ!いつか僕が食べようと学校に持ってきたクッキーを
勝手に食べたのはピスタチオだったのか!?そうなのかい、ピスタチオ!(きっと違います
ああッ!?逃げたってコトは、君=犯人ってことだね!?
そうなんだね!!?(だから違うって
…後ろに気配?誰だろう。影は結構大きいけど…。コレくらい大きいのって言えば…。
「ショコラ?よかった、無事だっねじロボねじロボねじロボねじロボねじロボ
ねじロボ
ねじロボォッ!!!」
ぜー、はー、ぜー、はー……なッ…何でいきなり後ろにエニグマが立ってるのッ!?
叫んじゃうよ!?『俺の背後に立つんじゃねぇ!』ってボディーブローするよ!!?(そいつは別のゲームだ
いやいや、そうじゃなくて。何はともあれ、ピスタチオを追わなきゃ。
さすがに1人でこの状況を切り抜けられるはずもないし、ピスタチオが心配だし…
…って、…あそこに倒れてるのは…
ピスタチオおぉぉぉッ!!ピスタチオおぉぉぉッ!!ピスタチオおぉぉぉッ!!(エコー
「ピスタチオの仇ぃッ!!」
おまえか、そこのネズミッ!おまえがピスタチオを殺したのか…ッ!?
「許さないッ!!」
クロック…出るだけ出て来い…ッ!
「はぐるまロボ!!」
…はあ…はあ…。…仇はとったよ、ピスタチオ…(涙しつつさわやかスマイル
安らかに眠ってね、ピスタチオ。君の事は、絶対に忘れないよ。(穴掘ってピスタチオ埋める
「ぴ!?フレーク、何するっぴ、フ「…ここから僕らを見守っていてくれ。絶対に、皆を連れてここに来るよ」
ピスタチオ、ここに眠る。
…僕はさっきまで何をしてたんだ!?(をゐ
「まだ生きてるのに埋めるなんて酷いっぴー!!」
「ッ!?」
ああ、せっかく作ったピスタチオのお墓が…(まだ言うか
「君は何が不満なんだい…?急ごしらえのお墓じゃダメなのか…?」
「だから元から死んでないっぴ!死んだフリだっぴ!!」
「…ピスタチオ…!僕の呼びかけに答えて生き返ってくれたんだね…!?」
「いっぺんそのスットンキョー頭かち割っていいっぴか?」
「ゴメンナサイもう勝手に人を生き埋めにしたりしません許してください」
そう…。偉大なるピスタチオ伝説は、今この瞬間、幕を開けたんだ…。
続く(強引だなおい
4,死と隣り合わせ
「気をつけろ、そっち行ったぞ!」
「おーけーっ!」
ピンクの帽子の少女が、誰かの声に応えて詠唱を始める。
「…母なる大地に生まれし命よ、我が呼びかけに答えたまえ。
蒼爽たる空より舞い降りて、我が元に来たらんと望む。
其の源は風、汝が名はエア!コールっ!!」
ぽんっ、という小気味のいい音と共に現れた、鳥のような姿をした精霊が3匹。
「続けていくよッ!援護お願い!」
今度は少女が、誰にともなく呼びかけた。銀髪の青年が、異形の怪物と少女の間に割って入る。
「烈風よ、此方<こなた>に来たれ。そして切り刻め、幾多の刃の渦となりて…プノエーっ!!」
青年が飛びのくと同時に、精霊の力によって威力を増幅された竜巻が現れる。
異形は切り刻まれ、吹き飛ばされ、もうその原型すらもわからない、赤い塊と化した。
「…はあっ…はあっ…まだ片付かない!?」
「ダメダ…!カコマレテテ、ニゲミチモサッキフサガレタゼ!」
「塞がれた!?そろそろ限界近いぜ、どうする!」
「どうするって言われても、こんなんじゃどうしようもありませんの!」
半ばヒステリックとも取れる叫びをあげるカシスとペシュ。
「押し通るにしたってこの数じゃ、まとわりつかれて袋叩きがいいとこだな」
「オレハナグラレルノハヘイキダガ、シュガータチハソウモイカナイシナ」
「ちっ…どうする…!?」
カシスにも焦りが窺える。…そのせいで、少女の背後に近寄る影に気づかない。
「…でも、このままでいたって、埒が明か…っぐぁッ!!」
背に深々と突き刺さる、モンスターの爪。
「シュガーっ!?」
気づいたカシスが其のモンスターの爪をシュガーの背から抜き、蹴り飛ばす。
「虚空に集うは心の気。ここに収束し、刃の波と化せッ!ジュリエンヌ!」
地面を奔る衝撃波。蹴り飛ばされ、体勢を立て直していなかったモンスターに直撃し、息の根を止める。
「シュガー!シュガー、大丈夫かッ!?」
「…死ヌ…?私…死ヌノ…?」
うまい具合に動脈を捉えていたらしく、背中からは多量の血が流れる。
…横向きに倒れるシュガーの目は虚ろで、口調はかなりうわごとに近くなっている。
「…?おい…シュガー…?」
「動いたらもっと血が出て死んじゃいますのッ!!」
「敵意…。…死ヌ…嫌…死ニタクナイ…!!」
まるで聞いてはいない。
「…ミナサン、イラッシャルヨウデ…!!」
カフェオレの声に、緊張が走る。
「…ちっくしょ、こんなときに…!」
舌打ちするカシス。
「ペシュ、シュガーを頼む」
「…は、はいですの!」
今まで愛の魔法をかけることを失念していたペシュ。
…治療しようとすぐそばにしゃがみこむと、シュガーが軽く息を吸う音を聞いた。
「シュガーちゃん…?」
彼女が何事かを呟くのと同時に、モンスターが一斉に飛び掛ってくる。
「日ノ光、命照ラスハ勇気、ソシテ希望。示セ、ソノ心、ソノ意志ヲ。…サンライト」
空から光が落ちた。光に焼かれ、次々とモンスター達は消え去ってゆく。
わずかに残ったモンスターは、恐れをなしたか、茂みの中へと消えていった。
「光の魔法…!シュガーは風属性のはずなのに」
カシスはまだ様子のおかしいシュガーを見下ろして、呟いた。
「…我が心、癒しに換えて。傷ついた者に、再び微笑みを。…天使のほほえみ」
シュガーが淡いピンクの光に包まれる。背中からの出血が止まった。
「…死ニタクナイ…死ニタクナイ…」
「シュガーちゃんっ!もう血は止まりましたの、大丈夫ですの!」
「…死ナナイノ…?」
「死にませんの!だから落ち着きますの!!」
「……。ヨカッタ…」
安心したように微笑を湛え、呟くと、シュガーは目を閉じ、ぐったりと動かなくなった。
一瞬、一同に『まさか』と冷や汗が流れたが、かすかに寝息が聞こえた。
「…ビ、ビックリサセヤガッテ。…シンダカトオモッチマッタジャネェカ」
「さっさと皆さん見つけて、とんずらした方がいいな。
こんな、どこででも死ねるような場所にいたら、体より頭がもたねぇ」
ふう、とため息をつきつつ、カフェオレとカシスは呟いた。
どこででも死ねるとまで言わしめるほどに、その旅は死と隣り合わせ。
5,先生
「……」
エキウロクリュから逃げてきた先の集落。物思いにふける女性。
…何日か経った。あの子達は…大丈夫かしら…。
光のプレーンにいるなら負けはしないと思うけれど、
でも、もしエニグマや、他のモンスターに危ない目に遭わされていたら…?
あまつさえ、エニグマに屈して、融合してしまってたりしたら…!?
…ううん。そんなことないわよね。私の自慢の教え子達ですもの。
…でも…でも……。……。
ついにその思考も止まってしまう。何だかんだ言って、やっぱり心配なのだ。
「…とんだことになったな、マドレーヌ」
「ッ!?」
不意に真横からかかった声。驚いて振り向くと、ここにいるはずのない人物が微笑む。
「ブレッド…?」
「放って置けなくてな。仕事もそっちのけて様子を見に来た」
まだ心の中でしか問うていないそれを見透かすように、先回りの回答。
「…彼らは大丈夫だと…思う?」
「…彼ら次第だ。特に、今後のフレークとガナッシュの動向次第で、どうとでもなってしまう」
「…?どういうこと?」
「いずれわかるさ」
問いかけると、ブレッドは曖昧に笑ってかわした。
「…どういうこと?」
「答えを持っていながら…いや、持っているからこそあえて導いてはいけない。
…そんな時だってあるということだ。わかるだろう、マドレーヌ」
「……」
マドレーヌが答えないでいると、ブレッドは再び口を開く。
「もどかしいものだ。だが、零から十まで導いてしまうと、
彼らはその通りにしか動けなくなる。六くらいまでで十分だ」
「そして、私達はまさに、その『六くらい』のところに立っているのね」
「そう。…ここから先は、ほとんどを彼らに委ねることになる」
「そして私もまた、自身のすべきことを考えて行動しなければならない」
マドレーヌはブレッドの言おうとしたことを先回りする。
「……」
「…でしょ?」
「…その通りだ。成長したな」
微笑むと、ブレッドはからかうような口調になる。
「何言ってるんですか!ブレッドより私のほうが長く生きてるんですからねっ!」
「…その割には」
彼は一歩マドレーヌに歩み寄る。そして思い切り顔を近づけた。
こうするとすぐ赤くなるじゃないか?
「―バカっ!」
そっぽを向き、恥ずかしそうに一言漏らした。
「…ソレはいいとして、だ」
彼は突然、今までのからかうような笑みを消す。
「…マドレーヌ。…わかっているな?」
「……ええ。私だって教師だもの。それくらい心得ているつもりよ」
主語がないため、その会話が何を意味するのか、傍からはわからない。
「…それを聞きたかった。…それじゃあ、そろそろ」
「待って」
去ろうとしたブレッドを、マドレーヌは呼び止めた。
「…何だ?」
「…どうやってここに来たの?プレーン間のワープなんて、
そんな簡単に出来ることじゃないはずよ?」
「…なんだ、そんなことか」
「むぅ、そんなことって何よ」
何でもないことを聞かれたようなリアクションをブレッドは返した。
「エニグマ以外にそんなことできる生き物なんていたかしら?」
「…いるじゃないか?あらゆるプレーンのあらゆる場所に、
それこそ何処にだって現れるシルクハットが。…昔、そいつにワープを習った」
「もしかして…ピッツァ?」
ブレッドは微笑むだけで何も答えない。
「さあ、そろそろシュガーたちがここに来る。…後は、頼んだぞ?」
「まっかせなさーいっ♪」
「…ふふ」
満足げに微笑み、彼の姿はいずこへともなく掻き消えた。
「先生ッ!!」
入れ違いに、1週間そこらなのに、1年近く聞いていなかったような、懐かしい声。
続?
6,帰ってきた!
「……でも、あれって結局なんだったのかな」
「さあ…?でも、アレのおかげで僕達はケルレンドゥを倒せたんだ。
あれが、君に最後のチャンスを作ってくれたから」
魔バスの中で、フレークとシュガーとの会話。
『くくくッ…。所詮人の子など、この程度のもの…』
「…くそっ!」
ふらふらと起き上がりながら、しかし立つだけでも姿勢の安定しないフレーク。
『…ほう。まだ立つと言うのか、この状況で』
「…好きに言ってなよ」
『だが、次で終わりだ』
静かに言い放ち、ケルレンドゥは詠唱を始めた。
「…くそっ!」
もう一度悪態をつく。…ケルレンドゥの闇は、もう既に形を成していた。
『くらうがいい』
「…まだ終わってない」
「シュガー…?」
「星明り。煌々輝くは願い、そして祈り。スターライト!」
『効かぬ!!』
シュガーは今までのたびでようやく発動できるようになった光の魔法を放ったが、
ケルレンドゥは片手に闇を保ったまま、空いた片手でそれをかき消してしまう。
『コレが光の魔法だと?ぬかせ、真の光とはこれしきのものではない』
―ならば見せよう。その真の光というものを。
…何処からともなく響いた声。
『…何だと!?貴様、どうやってここへ…!?』
広がる光は果て無き宇宙へ。生まれし輝きはすべてを守り、万物を煌きに閉ざす。闇無き世界、ここに成されり。
刹那、拡散する光。それによって、
今までケルレンドゥが形成していた闇が霧散した。
『く…!!』
「終わってない…終わらない…終わらせないッ!!」
シュガーは自身を奮い立たせるかのように叫んだ。
「母なる星に生まれし命よ、我が呼びかけに答えたまえ。
聖なる輝きより出でて、我が元に来たらんと望む。
其の源は光、汝が名はルクス!コールっ!!」
コールに応じ現れた精霊は、5匹。続けてシュガーは言葉をつむぐ。
「星明り。煌々輝くは願い、そして祈り!」
込められた願い。それは、誰一人として欠けることなく、いるべき場所へと帰ること。
「…スターライト…!!」
「…ううん。あの声は、教えてくれただけ」
「…教える?」
「そう、教えてくれたの。…私が…私達が歩むべき道…帰るべき場所」
流れていく景色に目を移し、シュガーは呟くように言った。
「……そうだね。そう考えていたほうがいいね…きっと」
30分ほど過ぎ、先生とフレーク以外は皆寝ている。今までの疲れが一気に出てきたのも理由のひとつだが、
先生が突然歌いだした子守唄が追い討ちをかけ、ほぼ全員を眠りへと引き込んでしまった。
…我ながらなんともベタな展開だが、ひとえに私の技量不足の賜物なので、どうかそ知らぬふりを決め込んでほしい。
「…先生」
「んー?」
「あの時、光の魔法を放ったのは…先生ですか?」
フレークは一度席を立つと先生の隣の席に移動し、彼女に問うた。
「……私じゃないわ。ガナッシュと話していたから」
「でもあれは、子供が出せるような魔力じゃなかった。…大人、それもかなりの上級魔術師でないと、あんな威力は」
「知らないったら知らないっ!」
何故かむきになって否定する彼女。フレークは怪しいと感じる前に、面白い…正直に言えば可愛い…と感じ、笑う。
「…なぁんで笑うかなぁー?」
「…何でも…くく、ははは」
「むぅっ!そんな生意気な子はこうしてやるぞぅ!」
「うわ!」
急に手を伸ばし、フレークを捕まえる。
「ちょ、何するんですか!」
「くすくすっ。皆が起きるまで離さないんだから」
先生はフレークの耳元で囁いた。そういうことに免疫の無い(笑)フレークはそれだけで抵抗を止める。
「…ねえ、フレークには好きな子っているの?」
「……いませんよ。そういう先生は、誰かいるんですか?」
「そりゃあいるわよ。先生だって大人なんですから」
質問を質問で切り返す。冗談か本当かわからない返答を先生は返した。
「どんな人です?」
「…真面目で優しくて、誰かのために一生懸命になれる…そう、『おにいさん』みたいな人」
具体的に誰なのか、先生は言おうとしない。
「…もっとはっきり、具体的に教えてもらえますか?」
「やだー」
問い詰めようとしたが、あっさりと断られた上、もっと強く抱きしめてきた。ちょうど顔を先生の胸にうずめる形になる。
「っ…せんせ、苦し…っ」
「あらー?ホントは結構嬉しいんじゃない?」
「………」
先生の予想とは違い、フレークは急にまた抵抗を止めた。
「…図星?」
「……。そういうことに、しておいてください」
かろうじてそれだけ聞き取れた。他にも何か喋った気がしたが、くぐもっていて聞こえなかった。
「おいガキども、そろそろ起きな!学校まであと2、30分そこらだぜ!」
突如響いたバルサミコの声。
「…そろそろ離してください」
「ぇ?」
いきなり静かになったフレークに驚いたか、先生はあっさりと彼を解放した。
「もうついたのかー…?」
大あくびをかましつつ、一番に起きたのはキルシュ。ついでガナッシュとカシス。
「…あれ、フレーク?さっきはシュガーの隣にいたのに…」
「ちょっと内緒話を…ね」
シードルの質問に対し、あいまいな答えを彼は返した。そしてすぐさま質問もつける。
「それより、帰ったら何するの?」
「え?もう何もしたくないよ。しいて言えばすぐに帰って寝たいかな。フレークは?」
「シリアル達と話しに行くかな。こういうことは真剣に聞いてくれるし」
「だっはー、おまえまだ動く気でいるのかよ。疲れてねぇのか?」
「ぜんぜん。むしろまだまだ動き足りない気分だ」
学校は目と鼻の先。出発のときとは逆に、どんどん大きくなっていく。
壊されたはずの校門は原型を留めず、まったく別なデザインになっていた。
暑さはピークを超えたのか、あのときよりもわずかに涼しい。
変わっているようで、まったく変化の無いそこは、紛れも無くウィル・オ・ウィスプ。
…帰ってきたんだ。
7,全員集合!
「8時だよ!」
『誰がそんなネタに乗るか!』
何の突拍子も無くフレークが大声を出す。が、全員から無視宣告され、
しかも変なことを言ったが故に教室から蹴り出された。
「…こほんっ」
それからたっぷり数十秒が経過していたが、場を取り繕うためにシュガーが咳払い。
「どんなわけだか知りませんが、これからフリートークします」
『おい』
数名からツッコミの声が上がったが、シュガーはソレを無視する。
「なお、ここに来て一部オリジナル要素がより強く混じるのでご注意です。
ではでは、最初の話題は…」
何処からともなくメモを取り出し、読み上げる。
「ツボ!」
「ツボ…ね。基本的にはいいヤツかな」
「回復してくれたり、色々教えてくれたりね」
レモンとブルーベリーの発言。
「でも邪魔なのもいるよな。なんであんなもん作るかね、ブラウニーもドワーフも」
「しかもさぁ、『カエルグミを入れると爆発するぜ!』だもん。
君達、僕らを殺す気?自爆野郎どもが。…なんちゃって」
ブラックな一面を惜しげもなく前面に出す。
「ごまかし遅ぇぞ、シードル」
「ブラックローズっ!」
「ごは!?…詠唱なしだと…!」
カシス臨終。彼の亡骸もフレーク同様教室から蹴り出された(主犯・シュガー。
「…あー…。話の流れを変える必要があるわね」
いいにくそうに、マドレーヌの提案。
「日ごろの疲れもたまってるだろうし…アイテムについての話でどう?」
「いいわね、そうしましょう」
誰ともなしに賛成し、話題変更。
「アイテムと言えば、真っ先に出るのはカエルとミミズだな」
「「……。」」←某グミ嫌い(とされる)コンビ、5歩後退。
「カラフルだし、結構見てて飽きないよねー」
何かソレ激しく間違ってないかい、シュガー?
「いやいやいや!」
そこを制したのは、シリアル少年。
「グミってのはな、あえて捕まえるだけで持ち歩くのが常識ってもんだぜ?」
「ええ?そうなの、シリアル?」
聞いたことも無い、という表情のブルーベリー。シリアルは続けた。
「そしていざ必要になったとき、まだ動くグミを情け容赦なく『ド外道がァ!』ごふぉ!!」
全員から手痛いツッコミをもらい、ぶっ飛ぶシリアル。そしてまたもシュガーが。
「ねぇ?そんな事言っちゃいけないのはわかってるよね?わかってるよね、シリアルっ?」
げしげしと倒れ付すシリアルを笑顔で蹴りながら、問う。
「ちょ、やめろって、痛い!痛いからやめれっての!」
「あっはははははははははッ!貴様みたいな虐待野郎はどこかに逝ってしまえェッ!」
ごずっ!!…という鈍い音を立て、シリアルは壁を突き破り、見えなくなった。
「よっし☆」
『どこがッ!?』
「まあまあ、あれでかなり頑丈だし、大丈夫でしょ」
「……シュガーコワイ…シュガーコワイ……ブツブツ…」
ものすごい光景を目の当たりにし、がたがた震えるカフェオレ。
そしてトーク続行。
「そういえばさ、しっぽってぴくぴく動いてるよな」
「あー!あれ何か気持ち悪いよねー!」
「結局使うようなことにはならなかったけど、どうやって使うのかな〜…?」
キルシュがふと思い出したように発した言葉に、アランシアとキャンディが反応。
「…まさか…アレ、食べるっぴか?」
「踊り食いですのー!」
タコとかそこらじゃあるまいに。ほぼ全員が、そんな目でペシュを凝視。
「や、止めるヌ〜…。…シリアルのアレを思い出してしまうヌ〜…」
『……』
言ってくれるな、忘れたいんだ。…カベルネを睨む全員の目が、何よりも語っていた。
「さあ、あんまり話はできませんでしたが、そろそろ時間なのですー♪」
終始笑顔だったシュガー。今度も笑顔で終了を宣言。
「やれやれ。…お題の最後だって言うのに、こんなのでいいのかな?」
「もう仕方ないんですの。腐れ茶ちゃんですもの」
何気に酷い言い方だな、ソレ。
「しかも出演してないメンバーも結構いたよね」
シードル、あんたペシュとグルか?
「2人とも、そんな言い方は無いでしょ!?」
「「シュガー…」」
「あいつは腐れてるなんてレベルじゃなくて、もはや飲めないの。
ただの腐れ茶じゃないわ、賞味期限切れの腐れ茶だったのよ!」
……orz
「そんなこんなで、強化週間お題、終了です」
「姫凪さん、待たせちゃってゴメンね」
「後で賞味期限切れ腐れ茶ちゃんはテッテーテキに…」
「…そうだね。こんなもの書いた罰に…」
「ちょ、シードル。そんなんじゃダメだよ!」
「…そうだよね。やっぱり、叩きのめすなんて、いけないこと…」
「どうせならもっと本格的にやらなきゃ♪」
「「……。」」
助けてください。ピンクの殺人鬼がここにいます。
強制終了