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リレー小説



漆黒の詩 -シッコクノウタ- 9



「はぁ、はぁ……っ」

「……は、……ふぅ……」

 息切れして悲鳴を上げる体。
 それを何とか動かしながら、オリーブとブルーベリーは廊下を歩いていた。

「これ、は……?」

 ブルーベリーが、息を漏らす。
 同時に声も漏れ、その言葉にオリーブは首を傾げた。


 ――開け放たれた扉の数々。


「わからない……」
 でも、きっと、何かあったんだよ。
 オリーブは胸の前で両手を握りしめると、ブルーベリーを見上げた。
 肩を上下させながら、まっすぐ廊下の先を見ているブルーベリー。

「……。いきましょう」

 ブルーベリーは一度こくりと頷くと、覚悟を決めたように歩き出した。

「うん」

 少し先を歩く、ブルーベリー。
 オリーブも、彼女の後を追って、歩き出した。


 呼吸をする度に、ひゅーひゅーと音がする。
 どこかイカれてしまったろうか。
 フレークはそんなことを考えながら、辺りを見回していた。
「ノエル、大丈夫?」
「う、うん……。なんとか……」
 隣に居たノエルに話しかけると、彼女は真っ青な顔で、彼に返答を返してきた。
 その向こうに、シュガーとローレル、それからキャンディとガナッシュの姿も見える。


 ――あれ?


 例の女性も、何かを探すようにきょろきょろ辺りを見回していた。
 そうだ、一人足りない。
 先ほどまで居たはずの、金髪の、彼。
 フレークがその姿を捉えようともう一度辺りをぐるりと見た時。
 例の女性が、小さく「あっ」と声を上げた。
 彼女の視線が、ある一点へ注がれている。





 ――開いた扉。





「あれ……?」
 彼女の視線の先を追ってだろう。
 キャンディが、小さく声を上げて首を傾げた。

「逃がすモノか……!!」

 と、その扉を見つめ終わった後、例の女性は怒りを露わに、扉へ駆け寄った。
 しかし、見えない壁に阻まれるように、ぴったり境界線で止まる。
「ふ……。まぁ、いい。残ったやつらだけでも……」
 彼女は体ごと振り返ると、残った面々をぐるりとねめ回した。

「マジですか……」

「ティンブラ……。まさか、一人で逃げた?」

 ローレルとノエルは、シュガーを挟んでお互いを見ると、愕然とした表情を浮かべた。



「あんなやつが魔法学校にいるなんて……」


 ――それにしても、霊体なのか?

 ぶつぶつ独り言を言いながら、廊下の元来た道を逆走する。
 少年は開け放たれた扉の中を全て見ながら、走っていた。
「ちっ。ここでもないか……」
 そうして、何かを探すように、次の扉へ移ろうと、体を方向転換させ……。

「わっ!」

「きゃっ!」

「あっ…!」

 廊下に、3人分の声が響いた。
「……ブルーベリー?」
「……そう言うあなたは……ティンブラ?」
「ティンブラまで来てたのね」
 よかった。ほっと胸をなで下ろしながら、ブルーベリーは彼の顔をもう一度確認した。
 そんな彼の顔にも、どこかほっとしたような表情が浮かんでいる。
「そうだ……。君たち、ブレッドを見なかった?」
「ブレッド? 見てないわ」
「ブレッドがどうかしたの?」
「いや……見ていないなら、いいんだ」
 そうか……。
 ティンブラは顎に手を当て考え始め……それから、首を振った。

「この先へ行くと、一つだけ開いた扉があるはずだ。……閉められてなきゃね」

 そこ以外は、全て閉めてきたから。
 ティンブラはそう言うと、廊下の先を指さした。
 しんと静まりかえった廊下に、彼の声が響く。
「扉? ……そこへ行けばいいのね?」
「そう。フレークたちがそこにいるはずだ。……ガナッシュが居るし、平気だとは思うんだけど……」
「ガナッシュが?」
「なるべく、早く行ってあげて。ただし……」
 遠くで、爆発したような音がした。
 ブルーベリーとオリーブが、慌てて彼の向こう……廊下の奥を見やる。



「扉の中には、絶対に入ってはいけない」



「え……?」
 彼はそう言い終えると、ブルーベリーたちが歩んできた道へ走っていった。
 その姿が、すぐに、小さくなって……やがて、見えなくなる。
「ティンブラ! ……一体、どういうこと?」
「わからない……。けど、急ごう。ブルーベリー」
「……そうね」
 オリーブの言葉に頷くと、ブルーベリーは歩き出した。
 この後に待っているかもしれない戦いに備えて、出来る限り体力を温存しておかなければいけない。
「フレークたち、無事だと良いけど……」
「うん……」
 2人は、出来る限りの早さで、開いていると思われる扉へと急いだ。



「マドレーヌ?」

「ブレッド? ……あら? あの子達は……?」
「あの子達?」
 1人で帰って来たブレッドに、マドレーヌは首を傾げた。
 途端に、顔を真っ青にする。

「もしかして……! どうしよう、ブレッド!!」

「落ち着け、マドレーヌ」
「でも、でも……っ!」
 ブレッドはマドレーヌの肩に手を置くと、そのままぽんぽんと叩いた。
 すぅ、はぁと、言われても居ないのにマドレーヌが深呼吸をする。
「大丈夫だ、マドレーヌ」
「ブレッド……」
 言い切ったブレッドに、マドレーヌは、廊下の先へ視線を走らせた。





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