漆黒の詩 -シッコクノウタ- 7
「ヒトの強い思いは、こうして残ってしまう」
「……」
「あの子は一体、何を伝えようとして居るんだろうね」
ブレッドから教えて貰ったことなど。
聞いたことを全て二人に伝えると、ふと、ティンブラはそう言った。
その瞳に、何かの光が宿っている。
……けれども、その光が何か、ローレルには察することが出来なかった。
「それにしても、やっぱり、どうにかして助けてあげたいわよね」
「うんうん。私も、キャンディに賛成。出来ることなら、どうにかしてあげたいな」
「でも……キャンディ、ノエル。それって、すごく危険だ」
考え込むキャンディに、頷くノエル。
2人の言葉を聞いて首を振ると、フレークはちらりとマドレーヌ先生を見やった。
彼女もまた、何かを考え込んでいるようだ。
顎に手を当て、じっと、床を見つめ続けている。
「先生? ローレル、フレーク、シュガー、ノエル? キャンディ? ティンブラ?」
「……? ガナッシュ?」
と、その時だった。
キャンディに続き、ガナッシュの登場。
ローレルは彼の名を呼び首を傾げ。
ノエルとキャンディは、彼を見るなり顔を輝かせた。
「こんな遅くに、一体どうしたの!?」
「珍しいねー。ガナッシュが夜更かしー」
「……き……君たちこそ、何をやってるんだ?」
とててと、近づいてくるノエル。ばたばたと、近づいてくるキャンディ。
ガナッシュは一歩後退ると、小さく首を傾げた。
ティンブラが、彼の様子を見てくすくすと笑っている。
「ガナッシュ、夜更かしは駄目だぞー?」
「……先生こそ、何してるんですか?」
「あなたまで巻き込みたくないから言わないわ!」
「…………」
まるで子供みたいだなぁ。
そう思った生徒が何人いたかは、定かではない。
「……。えっとねー、お化け騒ぎなんだよ」
「ノエル!!」
「そうなのよ! なんでも、ある事故のせいでね……」
「キャンディ!!」
一瞬止まった時の後。
ノエルとキャンディは、その口をあっさりと開いた。
話し始めたキャンディに、ガナッシュがそれを聞きながら数回頷く。
所々話に尾ヒレを付けつつ、彼女は彼に話し続けた。
「でも、君たちだけじゃ危ないんじゃないのか?」
尾ヒレの付いた話を聞き終わった後。
ガナッシュは、フレークとローレルを見やった。
「そうなんだよね……。でも、ブレッド先生が先に行ってるわけで……」
「どうしようか、話していた所なんだよ」
少し困ったように、ローレル。
腕を組みながら、フレーク。
2人はそう言うと、お互いを見やって軽く溜め息を吐いた。
「僕も一緒に行くよ」
「ティンブラ……?」
「まぁ、元はといえば、君たちを巻き込んだのは僕なワケだし。責任とらないとね」
そんな状況を、ずっと見ていたティンブラ。
彼は6人にウインクすると、後ろで不安そうにみんなを見ているマドレーヌ先生を振り返った。
「まぁ、ティンブラが一緒に行くなら……」
「うん。……ただし、君たちは守らなきゃいけないことがある」
「守らなきゃいけないこと?」
マドレーヌ先生が仕方なしに頷くと、それを汲み取ったのか、
ティンブラはこくりと頷いた後、6人に向き直った。
右腕を突き出し、人差し指を1本立てる。
「危なくなったら、逃げろ」
「うん……!! それを守れば、ついて行っていいんだね!」
「そうだね。駄目っていっても、どうせ君たちは行くんだろう?」
「……まぁ、そうかもね」
ティンブラはきっぱりとそう言うと、じっとみんなを見やった。
ノエルが、そしてシュガーが、返事を返す。
「君たちだけで行かれるより、僕が一緒に行った方が、ずっと状況はいいだろうし」
「えー。ティンブラって、役に立つのー?」
「僕たちだけで行くよりは、確かにいいかもね」
「あぁ……」
キャンディの言葉に、ティンブラが苦笑を浮かべる。
フレークとガナッシュ、それからローレルは、お互いを見やって頷いた。
マドレーヌ先生が、不安そうに窓の外へ視線を移す。
「必ず、無事で帰ってきてちょうだい。私が言えるのは、それだけよ」
「先生、心配しないで! きっと、良い結果をだすわ! ね、ガナッシュ?」
「そうだな……」
マドレーヌ先生は、キャンディとガナッシュの言葉を聞いて、ふっと笑んだ。
少し、諦めたような笑み。
けれども、なんだか、生徒の成長を喜んでいるようにも見えて。
「あなた達には敵わないわね。……行ってらっしゃい」
マドレーヌ先生は、みんながそこを去る前に、去っていった。
彼女の姿が、曲がり角へと吸い込まれていく。
「……。さて、行こう。僕が先頭を行くよ」
ま、そのモンスターと出会うまでは何もないだろうけどね。
ティンブラはそう言って笑うと、先を歩き始めた。
それに続いて、シュガー、ノエル、キャンディ、ローレル、フレーク、ガナッシュと続く。
シュガーとフレークはちらりと視線を交わらせると、肩を竦めた。
「ブルーベリー。……ブルーベリー」
数回、寮のドアをノックする。
珍しく寮に残ることにしたらしい彼女に、感謝。
「んん……。……あら、オリーブ?」
出てきたブルーベリーはくぅと伸びをしてから、珍しい夜の訪問者に首を傾げた。
「お願い。一緒に来て欲しいの!」
「……? 一体、何があったの?」
「キャンディがいなくなっちゃったの! それから……」
「落ち着いて、オリーブ。一緒に行くから、歩きながら話しましょう」
ブルーベリーは、オリーブについて行くため、部屋を出ようとし……。
それから、「ちょっと待って」と彼女を止めると、一度部屋へと戻っていった。
数分後、着替えを済まして出てきた彼女。
「あの格好のままじゃ、動きにくいわ。……さ、行きましょう」
「うん……っ」
着替え終わったブルーベリーと歩き出しながら、オリーブは手を組んだ。
――お願い、みんな。無事でいて……!!
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