渡る世間は金ばかり? シュイのシューン・レーベン編
「…やっぱりだ。イイモノ持ってる…♪」
「…?」
突然、自分をまじまじと見ながらそんな事を呟いた少女を、少年は怪訝な表情で見返す。
風の星に来て、何故か警察を引っ掻き回している黒い服の少年。
つい今しがたも、警察の戦車をどこかに誘導して戻ってきたところ。
「…ねぇ、シュイ」
ちょっと甘えた声を出してみる。
「ぁ?」
ノーリアクション。
「ぁ、これはもしかして…?」
「ハジマッタ、ナ。ネライハイワズモガナ…」
「…例の悪癖…ですか?」
3人ほど、後ろのほうでひそひそ。
「その盾、なんだけど」
「こいつか?」
シュイは自慢げに、背負っていた盾を手にとって掲げてみせる。
太陽の光を反射して、少し遠くの岩が照らされた。
「シューン・レーベン。確か、訳すと【美しき生命】だとか何とか言ってたっけな…ま、いいや。
こいつに魔力を注ぎ込むと、盾が魔法を打ち消す力場を作るんだ。でもって、
この力場の中じゃ魔法の形成が邪魔されて、かき消される。形を保ってても極端に威力が低い。
ずっと昔、光の星の女王が創り出した宝物だとか」
「ほら、やっぱり」
「ソウイウモノノケハイニハ、ヒトイチバイビンカンダカラナ、パナシェ」
「…」
3人ほど、後ろのほうでひそひそ。うち1人は苦笑している。
「…それで…さ。相談が、あるんだけど…?」
躊躇いがちな笑みを見せながら、上目遣い。
「相談?内容にもよるけど…なんだ」
ノーリアクション。
「その盾…私にくれたりなんてしない?」
「別に。…何もかも終わった後でよければ」
「「!?」」
「あらあら、気前がいいです」
条件付とはいえ、あっさりとOKを出してしまうシュイ。
それを見て驚愕してる2人と、動じないでのほほんとしてる1人。
「ホント?ホントにくれるの?」
「さっきも言ったように『後で』だけどな。約束したっていいさ」
「『後』っていつ?ねえ、いつ?」
もらえる算段が高くなり、おおはしゃぎのパナシェ。
「コヴォマカに戻ったら、だな。…わざわざ、こんなものをよこしてきたんだ。
いつかコイツが必要になるときが来る…。少なくとも、それまではダメだ」
「ふふーん♪コヴォマカに帰ったらお宝…♪」
「…聞いてくれよ、人の話。最後まで」
ついには小躍りのパナシェ。苦笑しながら、シュイはパナシェの肩に手を置く。
「私初めて見たよ?パナシェに物をねだられてあっさりOKするヒト」
「カレノバアイ、アノタテニシュウチャクガナインデショウ。
ヒツヨウナイモノハサッサトステルナリ、タニンニユズルタイプノニンゲントミウケマス」
「あら?よくわかりますね、カフェラテくん?」
「ソリャア、ダテニコダイキカイナンテシュゾクハ ヤッテマセンカラ」
そう返事をして、ふと気付く。
…トイウヨリモ、アナタハシュイニツイテ、イロイロシッテルヨウデスガ?」
「…くすくす。さあ、何故でしょうね…?」
「んー…。ぁ、実はワッフルさんって、シュイのお母さんだとか?」
「ふふっ。…お母さん、ですか」
悪戯っぽく笑うだけで、ワッフルは答えない。
「悪いことは言わないから、マドレーヌについては俺たちに任せておけって。
この先、警察やら海賊やら、色んな連中と戦うことになる。荷が重いだろ?」
「ふふん。リスクのぶんだけリターンもあるの!それを見逃す手なんてないわっ」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず、か。だが死んじまっちゃ元も子もない。…それでも、行くんだな?」
「もちろん」
真剣な顔をしてシュイが言えば、いたっていつもの調子でパナシェは返す。
「それに」
「…それに?」
「あなたみたいに、すっごいお宝を持ってるヒトと会えるかもしれないじゃなーい♪」
「…」
それには流石にかける言葉が無かったようで、何と言うべきか迷った後、結局彼は苦笑を返した。
「…死んでくれるなよ?おまえの死は、大きな悲しみを呼ぶ」
「ぇ…?」
呟きは、後ろの3人はもとより聞こえず、近くにいるパナシェにも発音を聞き取れなかった。
「…なんでも」
「おーい、後ろの連中ー、何やってるー?」
「ちょっとした内緒話、というものですー」
「ハニーミントはもうすぐだぜー?置いてくぞー?」
「待ってください、すぐ行きますー」
「…さて。行こうぜ、パナシェ?」
「…お宝…」
だから聞いてくれって、人の話。シュイは苦笑しながらパナシェと向かい合い、両肩に手を置いた。
後日、教室のパナシェの机に、美しい装飾を施された盾が置いてあったというが、真相は定かではない。
fin?