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リレー小説



渡る世間は金ばかり? リーベのキッチ・ブルット編

 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…売ってもいいの?」
「返せ」









ひょんなことからトロピカで出会い、パナシェたちについてきてくれることになった、マントの少女リーベ。
不思議なことに、彼女はパナシェそっくりで。唯一違うのが目だけだった。リーベはつり目で、視線が鋭い。

「売らせるために貸すわけではない。…やはり私も行く」
「…っち」



そんな彼女が持っていた、紅い刀身の大鎌。

曰く、それは古代機械より古い時代に作られた、呪いをかけられた拷問器具なのだそうだ。
刺そうが斬ろうが、生き物には傷一つ付けられない。代わりに、想像に絶えない激痛が襲い掛かる。
刃の紅い奇跡が、傷から噴き出す血に見えることから、キッチ・ブルットと呼ばれ怖れられたらしい。
ドイツとかいう国の言葉で、直訳は『まがい物の血』。転じて『血の幻覚』という意味だとか。

リーベがソレをパナシェによこして。
「ヤツらのアジトに向かうのだろう?私は他に用事があるから一緒には行けんから、代わりに貸しておく。
ソイツで斬りつけてやれば、並大抵の連中は一発で気絶するはずだ。…使い時は、自分で考えろ」

…という発言に対し、冒頭のリアクションをパナシェが返した、というわけだ。



「…しかし、よくもまあコイツを売ろうなどと、バカな考えを思いついたものだ」
パナシェから鎌を取り返し、担いで歩きながらリーベはパナシェに問いかける。
「呪いがかかってて、しかも骨董品だし?そういうものを好んで買い取る物好きもいるって聞いたから」
「…何度言われても、もう貸さんぞ」
「…っち」

(商魂たくましいですね、パナシェちゃん)
(そこは素直に言うべきだよ、ワッフルさん。『金の亡者』って)
(ソウダソウダ。ナンカイイッテモコリナイアノスガタ、マサシクカネノモウジャ)
(そうなノ。お金もパナシェが全部管理してるノ。おかげで、グミとかも充分に買えなくて困ってるのナ)
後ろでこそこそ話す4人。

「聞こえてるわよ、外野とワッフルさん!?」
「あらあら。…これは失礼いたしました」
ワッフルが苦笑いしながら謝る。
「いやいや、ワッフルを責めるのは筋違いだぞ、パナシェ。彼女は貴様をフォローしようとしていた」
「五十歩百歩!共犯につき連帯責任で罰金!」
…まあ、実際はチャイが言うように、お金や買い物はパナシェに管理されてるため、実際に罰金は無い。

「…苦労してるんだな」
「そうなのよ!いかに節約して、少しでもお金を稼ぐのか!難しいのよねー」
(…ただし貴様の連れが、な)
呆れ顔でため息をつく反面、『面白いヤツだ』とも思いながら、勘定を始めるパナシェの横顔を見ていた。



(…皆さん、ちょっと後ろ手に)
「?」
さっきよりも小声で…今度こそ、パナシェには聞こえていないようだ…ワッフルは囁く。

そのまま、チャイたちに何かを渡した。

(…!?これって…!)
(パナシェちゃんに気付かれたら盗られてしまいますから…内緒ですよ?)
手渡したのは、500ブラー。チャイ、ジャスミン、カフェラテに500ずつ、である。
(あまり大したものは買えないでしょうけれど、お菓子代わりにグミを買うくらいなら、充分なはずです)

(ワッフルさん、ありがとなノ。…でも、お金なんて持っ―)
目線の高さを合わせるようにかがんで、チャイの唇にそっと、立てた人差し指を当てる。
(ふふっ。それは、オトナノヒミツ…というものですよ、チャイくん?)
囁くような声と、さっきまでと違う艶っぽい笑み。ちょっとどきっとして、思わず一歩後退のチャイ。

(…サスガハ、ブレッドノイモウト…ッテカンジデスナ。コウイウトコロハ シッカリニテマス)
(なんだなんだー?チャイはワッフルさんに気があるのかなー?)
(ち、違うノ!別に、好きでもなんでもないノ!)
(あら、そういうことを言われてしまうなんて…女性として、少しショックですね)
(あうあー。みんながいじめるノ〜)

「遅れているぞー。何をしているー?」
振り向かないまま、リーベから声がかかる。…多分、リーベにはさっきのやり取りも聞かれているだろう。
「すみません。すぐ追いつきます!」

(…おくちにチャック、ですからね?)
(((イエス・マダム!)))
口元で人差し指を立てたワッフルに、三人は敬礼して返した。何となく、そうしたかった。



時間は少し遡って、ワッフルたちが内緒話を始めた頃。

「…で?何の勘定をしている?」
「んー、ジャスミンたちが持ってたお金を最初に没収しててねー、その分のプラスがそろそろなくなるのよー」
「…」
「あー、あの時ポモドーロからも貰っておけばよかったなー。そしたら、もう少し増えたのに」
「…」

「でさ、リーベ?」
「遅かれ早かれ貴様らとは別れることになる。私の持ち金まで没収されては、後々稼ぎなおすのが面倒だ」
「…」
「何を言われても、鎌も貸さんぞ」
「っち」
パナシェ、本日三度目の舌打ち。

(…あれ?…『貸さない』としか言ってないわよねぇ…?…くふ、ふふふっ…)
「…!(ぞくっ)」
一瞬、何か自分に対するよからぬ感情の片鱗を感じ取るリーベ。
「…貴様、何か妙な考えを起こさなかったか?」
「なーんにもー?」

獲物を見る目だ。アレは一流のハンターの目だった。リーベは後にそう語る。

「遅れているぞー。何をしているー?」
形勢不利と見たリーベは、後ろで何やら密談しているワッフルたちを呼び寄せる。
「すみません。すぐ追いつきます!」
返事はすぐ戻ってきた。

「っち」

四度目。









「くぉら、パナシェー!!」
「『貸さない』としか言わなかったんだから、文句はないでしょーっ!?」
「バカモノが!貸しすらせんのだから、無断で持ち出すなど言語道断に決まっている!
止まれパナシェ、そしてそこになおれ!斬り捨ててくれるわッ!」
「きゃー!たーけーてーすー!!」

リーベが件の大鎌を振り回しながら、パナシェを追いかけていく。

「…朝早くから元気な方々です、リーベちゃんもパナシェちゃんも」
「そこは素直に言うべきだよ、ワッフルさん。『バカ騒ぎ』って」
コレだけの騒音にも平然としているワッフルと、うんざりそうなジャスミン。
他2人は、もはや言葉も無いようだ。どこか遠い目で、騒ぎの元凶を眺めている。



「…止めた方が、よろしいですか?」
「…トメテヤッテクダサイ。ソウシナイト、シュッパツデキナインデ」
「わかりました。…少々、お待ちくださいね」









その時パナシェたちが何をされたのか、当事者たちは今なお何も言わないとか。









…終?

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