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リレー小説



漆黒の詩 -シッコクノウタ- 23




 何かを考え、ぞっとした体が震える。
 一度辺りを見回してから、少年は立ち上がり、窓の外を見やった。

「あぁ、ほら。サブレ。天に星が瞬いてるよう」

 隣の部屋に居る少女に向かって、語りかける。
 むろん、彼女には聞こえていない。
 少年はそのまま窓を開けて、少しだけ身を乗り出した。
 ……月明かりを反射する金色の髪が、少しだけ揺れる。
「ねぇ、サブレ。君と会ったあの日は、ころころと天気が変わっていたんだ」
 知ってる?
 彼は、空に向かってそっと微笑んだ。
 そして、手を伸ばす。……星を、その手で捕らえるような仕草。



「サブレ。君に会えたのは運命で、……あの4人は、きっと、君を救ってくれるよ」



 影は薄いけどね。頼りになるんだ。とても。
 珍しく、視界を流れ星が横切った。
「きついことを言っちゃったかな。……でも、僕が言うよりも、ブレッドが言った方が考えてくれる」
 少年は窓の縁に寄りかかると、目を閉じた。
 そろそろ、部屋の明かりをつけた方が良いかもしれない。
「僕は彼らの手助けをしたい。とても。けどそれは、成長に繋がらないから。……今回は、我慢しなくちゃね」
 カーテンを閉めると、開け放たれた窓から入ってきた風に、それが揺れた。
 彼はそれを気にするでもなく、備え付けのベッドに横たわる。
「すべてを教えてしまっては、成長しないモノね」
 くすくすと笑う彼の表情は……少し、嬉しそうにも見える。
 未来を見るように、そっと紫色の目を細め、揺れるカーテンを見やる。



「やっぱり、君には敵わないよ。ブレッド」



 すっと、驚いたような表情をして。
 少年はそれから幸せそうな笑みを浮かべて、枕に顔を埋めた。




「すべてが始まったのは……こんな日からだった」

 突然会話をよぎって、少女がそう言う。
 一緒に居た二人は、その言葉に揃って首を傾げた。
 ……まるで、双子のようだ。
「こんな日?」
「そう。星明かりも月明かりも届かない、こんな日」
 少女が窓の外を指さすと、二人の視線はそちらへと注がれた。
 そして、お互いを見合って、笑い合う。

「そうそう。最初は、ティンブラに言われたのがきっかけで」

「幽霊騒ぎに繋がって。メンバーも増えて」

「ブレッド先生達に支えられて、サブレまで辿り着くことが出来て」

「今はこうして、サブレとも笑い合うことが出来て」

 ノエルとローレルは交互にそう言うと、二人揃って人懐っこい笑みを浮かべた。
 それを聞いたサブレが、かすかに頬を染めて二人を見る。
「……そんな恥ずかしいこと、よく言えるわね」
「え? 恥ずかしいの?」
「恥ずかしくないよー」
「……」
 二人の言葉に、サブレは思わず黙り込んだ。
 そんなサブレを見て、またきゃいきゃいと騒ぎ出すノエルとローレル。


「出来れば……今すぐにでも成仏したいわね」

 ――ここは、居心地が良すぎるから。

 消えたく、なくなるから。


 サブレが呟いた言葉は、ノエルとローレルの耳には届かなかった。
 だんだんと暗くなっていく空。
 それを見ながら、少女は一人、そっと溜め息を吐いた。



「モギナスに……モギナスに連れて行って、それからどうするというのかしら?」
 ブルーベリーの言葉に、キャンディが首を傾げた。
「ヴァニラさんは、ブレッド先生は今夜中に、必ず私たちを連れて死のプレーンに行くって」
「すべては死のプレーンに行かないと分からない……か?」
 キャンディの言葉に、ガナッシュは小さく溜め息を吐いてそう言った。
 ヴァニラに、部屋を返して。
 みんなで空き部屋を探して陣取り。
 ぐるりと輪を作ると彼らはブルーベリーとフレークを中心に話し合っていた。
 その中には、ティンブラやノエル、ローレルの姿は見当たらない。

「ねぇ。……サブレを留まらせるのって……やっぱり……よくないことなのかな」

 ふと、オリーブが発言。
 彼女の言葉に、フレークは首を振った。
「よくないことでも、やらなきゃいけないんだ」
「それにしても……本当に、彼女って死んでるの?」
「キャンディ?」
 キャンディが疑問符を浮かべると、ブルーベリーは怪訝な顔を彼女に向けた。
 シュガーが、彼女の後ろで窓の外を見ている。
「みんな、死んでるって言ってるけど……私には、生きてるようにしか見えないんだもの」
「今更だよ、キャンディ。それに、今話し合うことは違うだろ?」
「けど……!」
 フレークに、人差し指を立てた手を突き出されて、キャンディは押し黙った。
 彼女は隣のオリーブの手を取ると、俯いた。


 ――コンコン。


 その時、ノック音。
 ドアに一番近かったガナッシュがそれを開けると、その先にはマドレーヌ先生とヴァニラが立っていた。
「先生? 姉さん?」
「ブレッドが、死のプレーンへ行くって」
 マドレーヌ先生がそう言うと、彼女から一歩下がった場所で、
 ヴァニラは彼らに向かってそっと微笑みかけた。
 その言葉に、立ち上がる面々。
 部屋を出る間際、シュガーは窓を振り返った。



 マドレーヌ先生に連れられて集まった場所には、
 すでに、ブレッド、サブレ、ノエル、ローレル、ティンブラが集まっていた。








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