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リレー小説



漆黒の詩 -シッコクノウタ- 18





「ちょっと待て、サブレ」

何か思い出したように、ブレッドはサブレを呼び止める。

「ぇ?」
「話がある」
有無を言わさず、ブレッドはサブレを引っ張る。少し離れた場所に来ると、足を止めた。



「…本当に、いいんだな?」
「ええ」
「後悔も…しないな?」
「………」

「今日、日付が変わるころ…俺の部屋に来い。…それで、全てが終わる」
「…わかったわ」

「……。行くといい」
ブレッドが言うと、サブレは無言で頷いて、マドレーヌ達の所へ小走りで駆け戻った。



「ブレッド、何だって?」
「…忘れ物は無いか、だって」
「何でもない話ね。…行こ、サブレ」

3人連れ立って、山道を降りていく。
それぞれの後ろ姿はまったく似つかないのに、
それでも、なにか姉妹のように見えなくもなかった。



「……。さて、俺はティンブラを捕まえに行く」
「ぇ?」
「事情が変わってな。どうしても今日、ここに連れ戻したい」
ブレッドも、どこかに行ってしまう。怪訝そうに、フレークはソレを見送った。



「…ねえ」
ローレルが不意に口を開いた。
「ブレッドの様子、ヘンじゃなかった?」
「…ぇ?」

「ちゃんと見てたの、フレーク?彼…サブレに『行け』って言った後、俯いてたじゃない」
表情を消したシュガーが、ローレルを肯定するような発言。
「あの、いつも堂々としてるブレッドが、よ?」
「…おかしいことばっかり。昨日、お食事会が終わってから調べたことも、ブレッドの言ったことと矛盾するし」



『結界じゃ、魔力を閉じ込めるのは無理なの。風を逃がさないように窓を閉め切るのと同じ。
風は結局何処からか出入りするし、仮に密閉できても、酸素は消費されてなくなっていくの』

ブルーベリーが言っていたこと。



「…先生にも、ウソついてるのかな」
俯きながら、ぼそりとノエルは呟いた。
「多分、ね。結界で体を維持できるとか、言ってあるんじゃないかしら?」

何をしようというんだろう、ブレッドは。
そんなウソばかりを、僕たちに吹き込んで。

「…ねえ、あと2日…っていうのも、ウソ…じゃないよね…?」
不安げに、誰にともなく、ローレルは問いかけた。
「…もしかしたら、サブレは誰にも知られずに消えていこうとしてるんじゃないか?」

不意のガナッシュの発言。皆がガナッシュに目をやる。

「本当に、あと何日かだけ生きられるにしても、それはウソで、今にも消えてしまいそうだとしても。
寂しいのが、怖いんじゃないかな。…何十年も、たった独りであの教室に閉じ込められてた彼女だから」



「だからこそ、その寂しさが大きくならないように、僕達に黙って、少しでも早く逝こうとしている…?」
ガナッシュの言葉を反芻するように。フレークはガナッシュに問いかける。
「本当は違うんだとしても、サブレとブレッドは何かを隠してる。…問い詰めて、聞き出さなきゃいけない」



「行こうよ!」
急にノエルが大声を出した。
「行かなきゃ!ブレッドが、サブレがこっそり消えようとしてるのを手助けしてるなら…
絶対、ブレッドは何か知ってる!助ける方法もホントは知ってて、ウソついてるのかもしれないよ!」

「そうね。どっちにしたって、ココまで関わって何も知らないまま終わるのは…私も嫌だよ」

「僕も。これで本当にお別れなら、寂しくたって『サヨナラ』を言わなきゃって思うから」

「………」

「フレーク…?」



「…実はね。僕にもあるんだ。誰も知らないうちに、誰にも知られずに、消えてしまいたい…そう思ったことが」

「結局僕は、誰にも会えない寂しさに負けたけど。…サブレは、それでも行こうとしてるんだ」

「…僕は、それを止める気には…なれない。それは彼女にとって、自分を絡め取って放さない鎖だから」
「フレーク、何を言って…!?」



「『行くな』って引き止めるのも…。『おかえり』を言うために待っているのも…。
同じように寂しいなら、『おかえり』って言える日を待っていたい。
…何も気にせずに、また一緒になれる日を。理不尽なお別れなんて考えなくていい、新しい日を」



「…だから、僕も行く。いつかまた…新しい彼女に、『おかえり』を言いたいから」

独善…かな?フレークは、呟いた。



「独善だとか、関係ないよ。きっと」
ノエルは微笑む。

「兄さんなりにサブレのことを想って、そんな風に言ったんでしょ?なら、ソレでいいと思う」
「僕も、それでいいと思うよ。こういうのは、何て言っても偽善とかに聞こえちゃうものだろうし」
シュガーも、ローレルも。

「行こう、フレーク。もやもやしたままバッドエンドなんて、俺たちには似合わない」

「…うん、そうだね。行こう、みんな」



「ほらほらー。私達を置いてくなんて、水臭いにも程があるんじゃないのー?」
「ああ、ごめん。忘れてた」
「あぅー!フレークひどーい!」

合流してきたキャンディ達を加えて。いざ行かん、真実へ。






ちなみに



「だぁー!追っ手増えたー!」

どどどどどど。

「………」
「何としても夜までに捕まえろ!間に合わなくなる!」
「了解」

どどどどどどどどど。

「たーけーてーすー!」

どどどどどどどどどどどど。






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