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リレー小説



漆黒の詩 -シッコクノウタ- 16





星明りが、届かなくなる頃。

皆が起きるには、まだ早い頃。



「フレーク…?」
「…」
普段被っている帽子は、今はベッドの枕元に置いてある。
普段は隠れている茶色のくせっけが、開いた窓からの風になびいた。
「起こしちゃった、か」

暁へと視線を注ぐ彼は、穏やかに、しかし凛とした横顔で、儚げに微笑む。
「いえ、私が勝手に起きたの。いつもこのくらいの時間に起きてるのは、知ってるでしょ?」
「……」
問いかけに、フレークは黙ったまま。彼女は回答を求めたりしない。
答えるまでもないこと、答えを知った上での問いかけに、彼は答えることはない。ソレを彼女は知っている。

「…ティンブラのこと、なんだけどさ」
「…?」
「どうして、来なかったんだろ」
「…案外、彼も結構、もろい性格なのかもね」
「ヒトってもろいね」
「……」
傍から聞けば、あまり意味を掴めない。が、2人の間では、このやり取りは会話として成立している。



朝日が、彼らを包んだ。






「…あれっ?」
窓から外を見ていたノエルが、唐突に呟く。
「…ねえ、ローレルーっ?」
「…んぅ…?何、ノエル…」
ゆさゆさと体を揺すると、眠たげに目をこすりながら起き上がる。
「アレ、サブレだよ?」
指さした窓の先。ローレルは目で追って。

そして見つけた。

「…ぁ」
「キレイなヒト、ってさ。サブレみたいな人の為にある言葉だって、そう思えるよね」
うっとりと、ノエルは麦藁荘の庭で朝日を浴びながら踊る女性に見入った。

金の髪が、赤い瞳が、朝日を受けて輝く。だが何より輝いていたのは、彼女の表情だった。

―などと、そんなことを言いたくなるくらい、彼女は楽しげで、笑顔は眩しかった。






昨日の夕食会から一夜明け、呼ばれたメンバーのほとんどは各々の住み家へと帰っている。
「「おっはよーっ」」
「………」
マドレーヌとガナッシュは、麦藁荘の空き部屋で夜を明かした。

「…問題は、なんでここにヴァニラさんがいるかってコトだね、ガナッシュ」

ガナッシュの部屋からは、何故かヴァニラが一緒に出てきた。
「どうして、って。…1人暮らしって結構寂しいぞっ?」
とか、ヴァニラ本人はのたまう。

「それに、からかう相手がいないと、全っ然つまんないしねっ?」
「…」
ここまでくると、ガナッシュがシスコンなのか、ヴァニラがブラコンなのか、わかりはしない。

「ほらほらーっ、さっさと食堂に集合ー。食事できてるぜ、お客さーん」
ブレッドをそのまま若返らせたような少年が、彼らを呼びに来た。






「…ティンブラが、ねぇ…。ブレッドは、何で行方をくらましたかわかる?」
「もろかったんじゃないか?」
「?」
即答し、さっさと食事を進めるブレッド。
「だが、ソレが理由だとしたら、連れ戻して見送らせなければなるまい」
「…ちょっと、酷なんじゃないかな」
「うん。せっかく、こうして友達になれてるのに」
フレークとローレルが口をそろえた。

「何が酷なものか」
が、ブレッドはソレを一蹴。

「むしろ、人付き合いとはそんなものだ。出会った以上、別れは訪れる。
思い出しても見ろ。サブレをこちら側へ誘い出したのは、ティンブラ自身だ」
ならば何が何でも、見送りもやってもらわなければならない。ブレッドは言う。

「それはともかく、サブレ。今日は誰と何をするんだ?」
「ぇ?」
唐突に話題を変えるブレッド。
「私とマドレーヌとで町を連れまわしてショッピングよ」
「そうそう。思いっきり、おめかししてねっ」
2人して顔を見合わせて、『ね〜っ』と。両方ともお転婆な性格なのか、話も合うらしい。
「…えっと…?」
そして、サブレ本人にはその計画は伝わっていなかったらしく、しどろもどろ。

「善は急げv」
「思い立ったが吉日v」
ばっと立ち上がり。

「きゃ…っ!?」
がしっと捕まえて。

「お着替えさせて、お化粧もして♪」
「うんとキレイにしてあげるからね、お人形さん♪」
連行。



『………。』

食事の手を止め、首だけ動かしてマドレーヌらを追う一同。

「…いいか?『見ざる、聞かざる、言わざる』だ」
「「「「「 OK 」」」」」



「…ぁ。そういえば、ティンブラは結局どうするの?」
思い出したように、シュガーが問う。
「心配は要らない。弟子の1人に捕獲命令を出しておく」
ブレッドは動じる様子もない。
「1人?ティンブラを1人で押さえつけられるのか…?」
「大丈夫だ。ニンジャだからな」
帰ってきたのは意味不明な答え。一同、くえすちょんまーく。

「…あの。ニンジャ、って…?」
代表して、ノエル。
「ニンジャはニンジャだ」
至極単純なブレッドの回答。

「ともかく心配は要らない。手間取るようなら俺も捕まえに行く。
明日までには、引き摺ってでもここに連れてくるさ」
「…うん、頼んだよ」
ブレッドはフレークには答えず、『任せておけ』とでも言うように笑みを浮かべた。



―ちょ、やめてっ…恥ずかし…―

―なぁに言ってるのっ!女同士なんだから、そんな隠さないっ!―

―マドレーヌ、コレなんか似合うんじゃない?―

―…うん、イイ!ぴったりじゃない!―

―   タスケテ   ココカラダシテ   ―



『……………。』

「…最早語るまい」
「「「「「 同感 」」」」」



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