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リレー小説



漆黒の詩 -シッコクノウタ- 13



「でも、変な話だよね」

「何が?」
 結局その日、女の子達全員がマドレーヌ先生の家に泊まることになって。
 ……ちなみに男子達は、学校の寮で待機している。
 大きなベッドに寝転がりながら、ノエルが言うと、反応を返してきたのはキャンディだった。
「『生き返る』なんて……本当は、あっちゃいけないことだよ」
「うーん。そうね。魔法でも、禁止されてるし」
「だったら、やっぱり……このまま一緒にいることは、出来ないんだよね」
「……だろうね」
 ぱんぱんとベッドを叩いて整えていたキャンディの手が、止まった。
 そのままじっと、ベッドへと視線を落として。
 ノエルはそんな彼女から視線をそらせようと、寝返りをうった。



「明日……少し、図書館で調べてみるわ」



「なら、私も手伝うわ。ブルーベリー」
「わ……私も!」
「ブルーベリー? シュガー? オリーブ?」
 寝ている女性を、起こさないように。
 極力小さな声で、ブルーベリーが言葉を発して。
 それに続き、シュガーとオリーブ。
 それを聞いて、ノエルは上半身をベッドから起こした。
 キャンディも、視線をベッドから移し、今はブルーベリー達を見ている。

「でも、図書館にあるかしらね。参考になる本なんて」

 キャンディは肩を竦めると、ベッドに、ダイブするように飛び込んだ。
 遠くの方から、「そろそろ寝るんだぞー?」なんて、マドレーヌ先生の声が聞こえてくる。
 もふりと自分を包むベッドの上で、足をぱたぱたさせるキャンディ。
「そうね……探せば、あるかもしれないわ」
「きっと……何か、手がかりは見つかると思うよ」
「まぁ、やってみなくちゃわからないしね」
 ノエルが、女性にちょっかいをかけ始めた。
 ちょいちょいと、髪を引っ張ってみたり。
 ちょいちょいと、頬をつついてみたり。
 ふにふにと、手を握ってみたり。



「……そろそろ、寝ましょうか」



 むむむ……。と、女性が起きそうな気配を見せて。
 ブルーベリーは、慌ててみんなにそう言った。
 ……とは言ったものの、もうそれほど寝ている時間は無い気がするのだが。
 眠りにつく直前。ノエルは、うっすらとした意識の中、ぽつりと呟いた。

「……なんで……せっかく生き返ったのに、消えなくちゃいけないんだろう……」



 翌朝。
 みんなが起きてきた時には、もう、マドレーヌ先生お手製の朝食が用意されていた。
 そして、キッチンに立つマドレーヌ先生の横に、あの女性。
 彼女の姿を捉えて、少女達はほっと安堵の息を漏らした。
「よかった……まだ、消えてないわね」
「ベッドにいないのを見たときは、冷や冷やしたよー」
「まぁ、まだ時間はある……って、こと……よね?」
 一人、また一人と、テーブルを囲み始めて。
 マドレーヌ先生と女性が席に着くと、普通よりも人数の多い朝食が始まった。

「それにしても……名前がないと、なんだか不便よね?」

「名前……?」
「そういえば、あなた……自分の名前は、覚えてるの?」
「……」
 マドレーヌ先生が首を傾げて女性を見ると、彼女はきょとりとした。
 そして、ブルーベリーの言葉に唇を噛む。


「ワタシ……覚えて、ない」


「……。資料を漁れば、なんとかなるかもなー」
「でも、30年前の資料なんて、簡単に見つかるんですか?」
 それに、一応隠されていたようだし。
 シュガーはマドレーヌ先生を見ると、彼女に問いかけた。
 うーんと、腕を組んで考え始めるマドレーヌ先生。

「……まぁ、なんとかやってみるわ」

 それまでの間、使う名前を考えなくちゃね。
 マドレーヌ先生はにこりと笑うと、女性の頭を撫でた。
「やっぱり、私たちのクラスに入るんですかぁー?」
「うーん。そうね!」
「やったぁ! じゃあ、一緒に勉強できるんだね!」
 がっしとキャンディが女性の手を掴むと、女性は「え? えぇ……」と、ちょっと戸惑うようなしぐさを見せた。
 隣で、にこにことノエルが笑っていて。
 ブルーベリーもオリーブもシュガーも微笑んでいて。
 ……それから、マドレーヌ先生もキャンディも。
 女性は彼女たちを見ると……それから、微笑み返した。



「今日、僕はちょっと出掛けてくるから」

「……。えぇ!?」
 ゆっさゆっさと揺さぶられ、起こされて。
 途端の台詞に、フレークは目を擦って、あくびをして、伸びをして、少し考えて……。
 それから、怪訝そうに彼を見た。
「よろしく!」
「ちょ、ちょっと待って! ティンブラ!!」
 勝手にやって来て勝手に何かを宣言し、びしっとポーズを決め窓から飛び降りたティンブラに、
 フレークはぽかんとした表情を浮かべながら、ティンブラの去っていった窓を見やった。



「……君がいない間に、彼女が消えたらどうするのさ……」



 いつの間にか、隣で眠っているローレル。
 彼を起こすか起こさないか迷ってから、フレークはふぅと溜め息を吐いた。

 ――彼女は、いつ消えるのか分からないのにね。

 そう思ってから、フレークは、
 もう一度ティンブラが去っていった窓へ視線を走らせた。





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