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四四十六茶小説



「…強く、なったな」
「…なんで…!?なんでそんな体で…!」

そんな問いかけにも、答えてはくれない。

「もっと、強くなれ。…おまえには、その力がある」
「…ちがう…違う!あんたのほうが、私よりずっと…!」

だけど、ゆっくりと首を横に振る。

「おまえは、もう俺を超えている。…たった今、俺を追い抜いて一歩前に出た」
「ぇ…?」
「いくら俺が挑んでも倒せなかったあいつを…おまえは、しとめた」
「それは…!あんたがずっと後ろから…」

「おまえはもう、俺についてくる必要も無い」
唐突に、冷徹に告げられたもの。それは、何だったか。

「…いつまで、喋らせる気だ」
「帰るまで…帰ってからもに決まってるじゃない、バカ!」
「…。この傷が見えないわけでもないだろう」

『彼』の胸に開く傷。ソレはその背にも穴を穿ち、限りない空のように蒼かった髪を赤く濡らす。
止め処なく紅は流れ出し、地を染め、さらに彩る。日が沈む一瞬の夕焼け、終焉の赤へ。

「そろそろのようだ。…まだ何か、喋り足らないことでもあるのか?」
力なく笑う『彼』。『彼女』は俯き、空色の前髪に目が隠れてしまう。
「…れよ」
「…?」
「…誰よ」



「最後まで諦めるなって私に教えたのは誰!?バカみたいに意地張ってでも生き延びろっていつも言ってたのは…何処の誰なのッ!?」



『彼』を睨みつけながら、しかしそこにあるものは怒りではなく、恐らく『彼女』自身ですら理解しえぬ感情の渦。
「あんた、自分で言ったことは絶対曲げなかったよね!?何だってやり通してきたよね!?」
「例外もある。昔にもあった。…積めば積むほど、山ほどに」
「弱気になってんじゃないわよ!自分で言い出したんだから、最後まで…最後まで…!」
最後のほうになって、『彼女』は感情に言葉をさえぎられた。
だが次の瞬間には、そのまま無言のうちに、『彼』の体を支え、背に負ぶさる。
「…やめろ。両手両足がふさがるうえに錘までつけていれば、間違いなくいい的だ」
「動けなくなる前に町に着けばいい話でしょ!?」
「それがいかに無謀なことか、来る道で十分わかったはずだ」
「…あんたね。自分がもう少しで死にそうだって時に、なんで他人のことばっかり!」
辺りは暗くなり始め、先は見えてこず、『彼女』はしかし、少しずつ、それでも前に足を踏み出してゆく。
「…今までと今とは状況が違う。終わりが見えた。…今は、だからこそだ」
「ふざけないで!!」

『彼女』は首だけ振り向いて『彼』を見据える。

「それなら…なんであんなこと言ったのよ…」
「…あんなこと?」
「あんたが言ったんじゃない!置いて行く気があるなら、ついてこいだなんていわない、って!」
ふいと『彼女』は、顔を背けて前に戻した。
「……」

「置いて逝かないで…ひとりに、しないで…」
「…。泣いているのか…?」
「あんたが死んじゃうかもしれないってだけでこんなに寂しいのに…!
ホントに死んじゃって、いなくなっちゃったら…どうなっちゃうか、わからないよっ!」

「…見えるところにいてよ…最後まで、ついていくからぁ…!」

ぽたぽたと音を立て、滴り落ちていく赤と無色。
ソレがやがて止まる時が、別れのときなのだろうか。

「……」
『彼』からは、もう既に返事がなくなっている。ただ、絶え絶えの息遣いが『彼女』の耳に届くだけ。
「私…今までずっと、がんばってきたんだよ…?今だって、もう無理ってくらいがんばってるよ…?
でも、あとちょっと…あとちょっとだけ、私、がんばれるから…」



もう少しだけ、がんばって…もう少しだから…『セルヴィン』…






空はいよいよ真紅に染まり、少しずつ黒く沈んでいこうとしている。
(ダメ…まだ夜になっちゃダメ…)

眼前に、ゆらゆらと揺れる橙色の明かり。
「あと少し…ホントに、あと少しだから…」

もうとっくに限界に達していてもおかしくはなかった。『彼女』も、『彼』も。
それでも、何がそうさせるのか、二人はおぼろげな意識のまま、前を見ていた。









「…セルヴィン…っ!!」

丸一日が経とうとしたころ、『彼女』の声が響いた。






…how do you continue this?

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