紅蓮光輝の戦姫 〜ワッフル・ウェルボット〜
「ありがとうございました。またおこしくださいね」
後にする家族連れへ深くお辞儀して、笑いかける。
「…兄上からの連絡が来ませんね…」
玄関の扉に『Closed』の札をかけ、女性は小さなため息をついた。
「1ヶ月ごとに、連絡をくれるという約束でしたのに…」
広い庭から、この季節にしては珍しく、雲ひとつ無い星空を見上げる。
「今度、学校に行ってドラジェさんに尋ねてみましょうか。
…兄上のことです、何か理由があるのでしょうが…」
とある山の山荘、そこの支配人は優しく穏やかな女性だという。
柔和な性格をしてはいるが、いざ有事には力強く凛と立つ。
それが、ワッフル・ウェルボットという女性だった。
「…っふ!」
サマーソルトのように繰り出された蹴りは、まるで炎の刃のような紅蓮の軌跡を描き、
立ち塞がる古代機械たちを切り裂いていく。
「…!」
ロケットパンチを受け止め、古代機械へ急接近。
「…やああッ!!」
目にも留まらぬ拳と蹴りのラッシュ。最後にアッパーで打ち上げ、踵落としで地面に叩きつける。
足元に散るは、夥しい量の残骸。その中心で彼女のみが立つ。ただ一輪咲く花のように。
「…百や二百の軍勢で、この私を止めることはかないません。さがりなさい!」
戦姫。今の彼女を何かにたとえるとすれば、まさにそれだろう。
「ほえー、ワッフルさんつよーい」
あっさりと警備ロボット群を突破し、ニウマーナの席に着く。
「…私よりも強い方は、まだまだ大勢おられますよ」
ワッフルは何事もなかったように穏やかに微笑んでいる。
「うっそだぁー。トゲモグラんとこの暗黒魔王だって、ボコボコにしちゃったじゃん」
「ジャスミンちゃんとパナシェちゃんが後ろから魔法を撃ってくれたから、隙を突けただけです」
そういって、ワッフルはジャスミンの頭を優しく撫でる。
「ぁー、そんなことするわけー?私もうそんな子供じゃないんだよー?」
「くすくす…。嫌なのでしたら、文句を言う前に離れてはいかがですか?」
「…むー。そうやってからかうとこ、ブレッドと同じだー」
ジャスミンは少しむくれながらも、結局しばらくはワッフルに撫でてもらっていた。
「…そういえば…パナシェちゃん?そこで何をなさっているのですか?」
「え?…あ、うん、ちょーっとね」
持っているのは、動かなくなった古代機械。ワッフルが動力部分を抜き出してしまったものだ。
「これだけ完全な形なんだから、それなりに売れると思って…ふふ」
「…やっぱり。さっきもいなくなってたと思ったら、そんなもの引き摺ってきてたんだ」
盛大にため息のジャスミン。
「…??」
パナシェの行動の意味を理解できず、ワッフルはきょとんと首を傾げる。
「確かに、古代機械には失われてしまった技術がいくつも用いられていると聞きますが…。
その技術を受け継ぐ者も今ではごく少数しか残っていなくて、解析はほとんど不可能だそうですよ?」
パナシェ、フリーズ。
「仕組みがわかりそうなのは…火の星にいるという、グレナデン指揮下のドワーフたちくらいだとか」
要するに、誰に渡しても大したお金にはなりません。苦笑しながら、ワッフルはそう告げた。
「………」
パナシェ、無言で古代機械をポイ捨て。
「ぁ、ちょっと!?」
「ほらほら!さっさと次行くわよ、次!」
どすんと操縦席に座り、計器類をいじる。
「ねえちょっと!コレ行き先決められないの!?」
「わ、私に聞かれたって知らないよ!?」
「焦っても仕方ありません。『急いては事を仕損じる』…ですよ?リラックスリラックス、です」
三者三様の反応を見せる彼女達を乗せ、ニウマーナは永い眠りから目覚め、飛び立っていった。
…fin?